ビジョナリーカンパニー2 飛躍の法則

ビジョナリー・カンパニー 2 - 飛躍の法則

ビジョナリー・カンパニー 2 - 飛躍の法則

[内容]

「良好な企業」が「偉大な企業」へ飛躍するためには何が必要か。何が必要でないか。

 

[感想]

本書の良いところは「偉大な企業」を、15年以上の長いスパンで定義しているところ。この定義から行けば、今流行りのユニクロ、任天堂やマクドナルドは「偉大な企業」とは言えないんでしょう。「ユニクロ成長の秘訣」みたいな感じのミーハーな本とは一線を画していて、信頼できる調査結果だと感じました。

ただ、著者は第一章において、事実のみを見て主観は一切排除した、としていますが、事実から概念を抜き出す、という行為には少なからず主観は入るはずなので、そこに注意は必要だと思います。

本書の内容を実行できるかどうか。一つ一つのステップは簡単なようで、それぞれ個人に我、主張がある人びとの中でこれらを実行するのは非常に難しく感じます。例えば二つめのステップである「適切な人物を選ぶ」。企業に属する自分にとっては、たとえ社長になったとしても、株主からの圧力に耐えつつこれを実行するのは困難でしょう。やはりこれらのステップ全てを反復し続けた偉大な企業は、偉大です。

企業に属する自分が仕事する上でどう役立つか。まず、自分が第五水準になれるように努力します。謙虚に、かつ意志を強く持つ。その上で、社内起業のような形で「適切な人物を選ぶ」ステップに進む際に、協力してもらえる人物を探していきたいです。

短期間で成果が出る本ではありません。長い時間をかけて、挑戦する甲斐のある内容です。

 

[概要]

第一章 偉大な企業(本書の要旨)

定義株式運用成績が十五年にわたって市場並み以下の状態が続き、転換後は一変して、十五年にわたって市場平均の三倍以上になったこと

 

偉大な企業を選定する上で

・産業の動きによる飛躍の企業は排除した。

・主観を排除するため、株式運用成績だけを選別基準にした。

 

飛躍した企業に共通していて、比較対象企業との違いをもたらしている点はなにか。

 

分析においては、事実から直接理論を導く方法(帰納法)を用いた。

 

分析の結果分かった、意外な事実の例

・著名で派手な社外からのリーダーと、飛躍には相関がマイナス。

・経営陣の報酬は飛躍に関係ない。

・戦略の確立は飛躍に関係ない。

・飛躍企業は「すべきこと」でなく「してはならないこと」を重視。

・技術は飛躍を加速しうるが、飛躍をもたらすことはない。

M&Aは飛躍をもたらさない。

・飛躍した企業は、士気、動機づけ、変化には注意しない。

・飛躍した企業は革命的な方法を取らない。

・偉大さは事業環境の変化によって生み出されたものではない。

 

飛躍をもたらすもの:弾み車

1.規律ある人材

 ・第五水準のリーダーシップ

   :個人としての謙虚さと、職業人としての意志の強さ

 ・最初に人を選びその後に目標を選ぶ

2.規律ある人材

 ・厳しい現実を直視する(だが、勝利への確信を失わない)

 ・針鼠の概念

   :情熱を持って取り組めて、自社が世界一になれて、経済的原動力になるもの

3.規律ある行動

 ・規律の文化

   :過剰な管理が不要になる

 ・促進剤としての技術

 

これらを弾み車のように回し続けることで、考えられないほど回転が早くなる。

 

 

第二章 第五水準のリーダーシップ(一つ目の要素)

第一水準:有能な個人

第二水準:組織に寄与する個人

第三水準:有能な管理者

第四水準:有能な経営者

第五水準の経営者:個人としての謙虚さと職業人としての意志の強さ

 

信じがたいほどの大きな野心を組織に向けていて、自分自身には向けていない。

 

成功した時は窓の外を見て、成功をもたらした要因を見つけ出す(具体的な人物や出来事が見つからない場合は幸運を持ち出す)。結果が悪かった時は鏡を見て、自分に責任があると考える(運が悪かったからとは考えない)。

 

比較対象企業の経営者は、偉大な経営者だと世評を集めるのに熱心で、自分が引退した後に会社が成功を収められるようにはしていない。

例:リー・アイコッカ(クライスラーの再建)

再建後は次第に自分を売り込むようになり、人気を得た。アイコッカの株は大いに上がったが、在任期間の後半には、クライスラー株の運用成績は市場平均を31%下回った。

 

 

皮肉なことに、謙虚な人物は権力を求めない。しかも取締役会は、偉大な組織には押しの強い人物が必要だと誤解している。よって、第五水準の経営者はめったにいない。

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第五水準の人物を見つけるには、異例なほど素晴らしい実績があるのに、自分の功績だとしゃしゃり出る人物がいない場合に注意する。おそらくは、第五水準の指導者になりうる人物が関与している。

 

 

第三章 最初に人を選び、その後に目標を選ぶ(二つ目の要素)

「何をすべきか」でなく「誰を選ぶか」を優先すれば

・環境の変化に適応しやすくなる

・動機づけの問題や管理の問題はほぼなくなる

・正しい方向、正しい方針を実施できる

 

1.適切な人物を選び、不適切な人物を外し、その後に目標を決める。

2.飛躍には、人事の決定に極端なまでの厳格さが必要。

 

比較対象企業では、「一人の天才を千人で支える方式」を取る。

1 第四水準の経営者

2 最初に目標を選ぶ

3 そのビジョン実現の為に能力の高い兵士を集める

 

飛躍した企業は

1 第五水準の経営者

2 最初に人を選ぶ

3 その後に最適な道、目標を選ぶ

 

報酬制度の目的は、不適切な人びとから正しい行動を引き出すことにはなく、適切な人びとをバスに乗せ、その後もバスに乗り続けてもらうことにある。

 

適切な人材とは、学歴や技能、専門知識、経験などより、性格と基礎的能力である。

 

厳格であって冷酷ではない。

・リストラや首切りは、飛躍への道筋ではない。

・疑問があれば採用せず、人材を探し続ける。

・人を入れ替える必要があると分かれば、すぐに行動する。

 (その人物をもう一度採用するか?その人物が辞職するとしたら失望するか?を考える)

・最高の人物は、最大の問題の解決ではなく、最高の機会の追求に充てる。

 

 

第四章 厳しい現実を直視する(三つ目の要素)

社外の現実ではなく、経営者の顔色を伺っている状況を経営者が許していると、会社は凡庸になる。

カリスマ経営者の弱み:部下が厳しい現実を報告しなくなる

 

厳しい現実を直視する社風を作る。

「自分の意見を言える機会」ではなく、「上司が意見を聞く機会」を作る。

 

1.答えではなく、質問によって指導する。

2.対話と論争を行い、強制はしない。(激しい議論を好む)

3.解剖を行い、非難はしない。

4.「赤旗」の仕組みを作る。(情報の質でなく、入手した情報を無視できない情報に変えられるかどうか)

 

厳しい現実を真っ向から見据えて、「われわれは決して諦めない。決して降伏しない。時間が掛かるとしても、必ず勝つ方法を見つけ出す」と宣言すれば、気分は高揚する。

 

ストックデールの逆説

勝利への確信を失ってはならない。

同時に

もっとも厳しい現実を直視しなければならない。

 

 

第五章 針鼠の概念(四つ目の要素)

針鼠型の人たちは本質を見抜き、本質以外の点を無視する

 

針鼠の概念

第一に、戦略策定の基礎として、三つの主要な側面(三つの円)を深く理解する。

第二に、この深い理解を単純で明快な概念にまとめ、この概念を全ての活動の指針にしている。

 

三つの円

1.自社が世界一になれる部分はどこか

  核的能力とは限らない。

2.経済的原動力になるのは何か

  「X当たりの利益」の「X」に最も相応しいのは何か。

  持続的かつ最大の成長をもたらすようにXを選ぶ。

  Xに関する問いを使って、自社の経済的現実に関する理解を深める。

3.情熱を持って取り組めるのは何か

  どうすれば熱意を刺激できるかではなくて、どのような事業なら熱意を持てるか。

 

最高を目指すことではない、最高になれる部分はどこかについての理解。

 

能力の罠

無難な仕事を続けていても、無難になれるだけである。

 

比較対象企業では、

・三つの円で示された問いを立てていない。

・目標を立てるのに、現実の理解でなく、虚勢に頼っている。

 

針鼠の概念の確立

三つの円に基づく問い

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三つの円に基づく議論と論争

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三つの円に基づく経営方針の決定

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三つの円に基づく解剖と分析

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適切な人びとによる評議会で、三つの円に基づく議論と討論を長期にわたって反復する。

 

「世界一といえる部分がどこにもないし、これまでにもなかった」という結論に至った場合どうするか。

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「世界一になれる部分がどこかにあるはずだ。それを探し出してみせる。世界一にはなれない点がある厳しい現実も、直視しなければならない。この点で幻想を抱いてはならない。」

 

第六章 規律の文化(五つ目の要素)

人ではなく、システムを管理する。

規律ある人材、規律ある考え(厳しい現実の直視)の後に来る最後の規律:規律ある行動

この順番が重要。

 

1.枠組みの中での自由と規律

2.ふさわしい人材として、みずから規律を守り、最大限努力する人を集める。

3.規律の文化と規律をもたらす暴君は違う。

4.「止めるべき点のリスト」を作り、三つの円から外れるものを組織的に取り除いていく。

 

三つの円が重なる部分を理解できると、大胆な賭けに保険を掛けることはまずない。

最も効果的な投資戦略は、「正しく選択した分野への非分散投資」である。

 

第七章 促進剤としての技術(六つ目の要素)

新技術に振り回されない。

派手な技術、大げさな広告、株式市場の根拠なき熱狂によっては飛躍しない。

 

針鼠の概念が技術の利用方法を決めるのであって、その逆ではない

 

重要なのは、針鼠の概念の三つの円が重なる部分に直接に関係する技術のみ。

 

経営史をみても、新技術の先駆者が最終的に勝者になった例は極めて少ない

二番手、三番手の追随企業が開拓者を打ち負かすパターンはよくある。

 

深い理解もなく、安易な解決策として技術に飛びついた場合には、自らが招いた転落を促進する要因になる。

 

飛躍を遂げた企業は、競争による打撃への恐怖によって動かされてはいない。

受身になって右往左往していれば、悪循環に陥り、凡庸の状態に止まる

 

第八章 弾み車と悪循環

飛躍に大きな転換の決定打はない。

小さな動きを大量に積み重ねていった結果。

 

短期的な業績向上を求める圧力をうけながらも、弾み車による準備と突破を目指す忍耐力と規律。

常に改善を続け、業績を伸ばし続けている事実に、極めて大きな力がある。

 

目標を熱心に伝える必要はない。

弾み車の勢いを見て各人が判断してくれる。

「これを続けていけば、すごいことができるぞ」

可能性を実現しようとみなが考えるようになり、目標はおのずから決まってくる。

 

第五水準の指導者に私心がなく、計画達成に打ち込んでいるのを見れば、斜に構えていた人も真剣になる

 

比較対象企業の悪循環

準備段階を飛び越して一気に突破段階へはいろうとする。

新たな方針、企画、指導者、式典、流行の追求、買収

↓↓↓↓

業績が上がらず、勢いがつかない

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業績への失望

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理解しないままの反応

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第九章 ビジョナリーカンパニーへの道

基本理念を維持し、進歩を促す。

基本的な価値観と目的を維持しながら、事業戦略や事業観光は世界の変化にたえず適用している。

 

この本全体の要点は、今実行している内かなりの部分が、力の無駄遣いであると認識することにある。

仕事時間のうち半分以上を原則の適用にあて、それ以外は無視、中止すれば人生が単純になり、業績がはるかに向上する。

 

「なぜ偉大さを追求しなければならないのか、そこそこの成功で十分ではないのか」と問わなければならないのであれば、おそらく、仕事の選択を間違えている。

 

Q&A

Q.傑出した人材が足りない中で、どうやって「適切な人材」規律を守るか。

A.最上層部は見つかるまで待つ。性格を重視して専門知識偏重を改める。適任仕事がなくても不景気時に雇う。

 

Q.不適切な人物をバスから下ろすのが難しい場合はどうするか。

A.達成まで時間をかける。

 

Q.CEOでない立場で何ができるのか。

A.じつにさまざまなことができる。

 

Q.どこからどのように始めるべきか

A.まず本書の内容、概念をよく理解する。次に、「最初に人を選ぶ」から順に主要な概念をひとつずつ実行していく。一歩で、第五水準の指導者になれるよう、つねに自分を磨いていく。