個性にこだわる起業は失敗する

世の中には様々な職業、性格、年齢、学歴を持った人達がいます。「みんな違ってみんな良い」という名言があるように、それぞれが異なる個性を持った個人です。しかし、事業を起こすとなると、その個性にこだわっていては失敗するようです。

成功者の告白 5年間の起業ノウハウを3時間で学べる物語

成功者の告白 5年間の起業ノウハウを3時間で学べる物語


本書では『あなたの会社が90日で儲る!』や『非常識な成功法則』など多数の著書を持つ著者が、数々の起業をコンサルタントしてきた経験から、企業の展開パターンには決まった型がある、と説明しています。それら決まったパターンを分かり易く、物語にそって説明してくれる、非常に取っ付き易い、読み易い本でした。

多くの起業家が、自分の事業で起こる成功、失敗、問題は自社に特有の問題だと考えるようですが、本書では事業の立ち上げの成功や失敗、会社成熟期の人間関係、さらには離婚や子供の病気までもがパターンに当てはまると説いています。

「あなたはパターン通り失敗している」と言われるとイラっとしてしまいますが、パターンを知っていれば少なくともパターン通り失敗することは避けられます。5年で80%が消えると言われるベンチャー企業において、しなくてもいい型通りの失敗は避けたいものです。

知識がなければ、我々は感情の奴隷になり、パターンにはまり込む


1.起業時の成功と失敗

成功するパターン:既存市場のニッチを狙って企業。
失敗するパターン:ダイヤモンドの原石を探す努力をせずに、目の前の石ころを磨く。

既存市場のニッチとは、市場が成長期の前半であり、ライバルに優位性があり、十分な粗利があることが必須だそうです。何においてもタイミングを重視することが大事。

2.顧客を増やす際の成功と失敗

成功するパターン:リピーターを増やす努力と、スピードを重視する。
失敗するパターン:上手く行っている現状を判断できずコースから降りる。

顧客はすぐにはモノを買いません。資料請求などのファースト・コンタクトから購入までにはタイムラグがあることを理解できるかどうかがポイントのようです。資料請求した顧客には成功事例のレポートを送り続けたり、見積もり依頼に迅速に対応することが大事です。


3.成長期入り口の家庭の成功と失敗

成功するパターン:夫婦が同じスピードで成長。
失敗するパターン:行き過ぎたプラス思考で家庭にマイナス思考を生む。

企業がうまくいき始める成長期に最も離婚が増えるそうです。多くのビジネスマンの家庭が上手く行っていないのは、それぞれに全く異なる理由があるのではなく、パターンだといことです。一時的な家庭不和ならまだしも、マイナス思考が漂う家庭の歪みは、家庭の最も弱い部分である子供に悪影響を与えます。

これは起業家のみならず、全てのビジネスマンに当てはまることだと思います。私の父はサラリーマン、母は子供相手に英語を教えていました。共働き夫婦の子としては寂しいこともありましたが、却って家庭バランスが保たれていたのかもしれません。今でも家庭が最も心安らぐ場所なのは母親、父親が成長しあえる存在だったからなのでしょう。


4.家業から組織へ生まれ変わる時の成功と失敗

成功するパターン:会社をソフト面でシステム化する。
失敗するパターン:オーナー主導型から抜け出せず年商10億円弱を行き来する。

心理学を組織に適用すると様々なことが見えてきます。クレーム対応などストレスフルな仕事をしている人がいると、場自体が病的になる。その結果として構成員を通して病が頻発するのがパターンだそうです。成功するパターンには、

怒りの発散⇒母親的な愛情⇒父親的なしつけ⇒経営のシステム化

という順番を踏むことが必要です。


5.成熟期の成功と失敗

成功するパターン:成長カーブの位置によって異なる資質が活躍する。
失敗するパターン:起業家もしくは実務家のエネルギーが強すぎる。

成長カーブの場所によって①起業家、②実務家、③管理者が活躍すべき時期が決まっています。そして反発するそれぞれをひとつにする④まとめ役も大事だそうです。

いわゆる「できる人」というのはどういう人物のことを言うのか、常に疑問に思っていました。誰が見ても圧倒的にできる!という人にはなかなか出会えないため、経験からは分からなかったからです。しかし、それぞれの場面において必要な資質は異なる、「できる人」に必要な資質は時と場合によって異なるということだと思います。自分の強みを活かせるのはどういう場面なのか、私はまだこれから見極めていかなければなりません。


最後に

どれだけ複雑であっても、単純なパターン化を通して理解するという行程は科学においても非常に重要です。物質の運動を単純な数式で表し難しい事象を予見します。例外を例外として見過ごすのではなく、パターンがあることを理解することは先読み力をも与えてくれるのだと思います。


メモ
-MBAで学ぶのは経営管理であって、創造のための知識ではない。
-顧客数が少なければ下請け仕事と変わらない。
-収入はシンプルな法則で決まる。どれだけ多くの顧客に役立てるか。
-お客様の声はビジネスの根本。シンプルながらもっとも効果的な広告になる。