はじめての課長の教科書

はじめての課長の教科書

はじめての課長の教科書



[内容]

これからの日本型組織の中核を担う中間管理職『課長』の必要性、仕事、目指すべきものを具体的なレベルまで落とし込んで記述してある。



[感想]

課長というのは、思っていた以上に重要で、やりがいがある仕事なのか。本質をついたような「おっとこれは」と思わせてくれる記述がたくさんあって、ポストイットが3枚/ページ以上あるページもたくさんあった。たとえば、「自己犠牲的な若手は、単なるアピールにすぎないと思った方が無難」とか、まるで自分のことを見透かされているようで、ドーンと胸にきた。労働者にとって働きやすい企業かどうかは、こういった中間管理職(課長)の役割が非常に大事だな。就職活動でも、課長に注目すべきだな。



[概要]

第1章 課長とは何か

法的にも実質的(予算管理・経営者と話す・部下を評価)にも管理職の中の最も下位の職

1.係長とは大きな差

課長への出世がキャリア形成の大きなヤマ



2.部長よりも部下が多い

部下は玉石混合

部下はそもそもやめるもの、という認識が必要

部下・顧客・部長に配慮しなければならない

予算とは、部長にとっては政治的ツール、課長にとっては達成目標



3.課長はマネージャー、経営者はリーダー



4.最重要仕事は部下のモチベーション管理

モチベーションは向上よりも、維持

部下が「会社に大事にされている」という実感を持てるか

部下の人間性に興味を示してやる



5.成果主義の終わり

労働者の多様化から成果主義になってしまった

成果主義ではチームワークが破たん

新しい人事制度では、課長以上は緩やかな成果主義、それ以下は金銭・昇進以外でも応える

課長は家族的方法で部下をまとめる

課長は社内ベンチャーの社長



6.価値観の通訳

幅広い年代の部下の価値観を通訳

若い世代の自己犠牲は、ホンネを隠したアピールであることが多い

共通の価値観=「顧客第一主義」で部下をまとめる



7.情報伝達のキーパーソン

課長で経営情報と現場情報がクロスする

風通しのいい企業では、情報のフィルタリングが個人に任される

    イノベーションが起こる・社内政治は複雑に

役割分担が明確な組織では、ルーティン・ワークをこなすには快適

    イノベーション起こりにくい・社内政治はシンプル

ITにより風通しのいい企業になる→課長は情報伝達の中心に



8.ピラミッド型組織での役割

今後も組織の基本はピラミッド型

末端社員はルーティンから外れた例外を認知する必要がある

中間管理職は例外を素早く発見する仕組みを作るのが仕事

経営者に口を出すときは、「経営者はお金のことで悩んでいる時間が多い」ということを認識しなければならない

例外に柔軟に対応することが役職権威を正当化する

ルーティン・ワークを格下に見るのは間違い



9.中間管理職が日本型組織の強み

重要な現場情報を、経営者の大きなビジョンにつなぐ知恵を絞る

比喩や象徴によって経営者のビジョンを翻訳する



第2章 課長の基本スキル

1.部下を守り安心させる

悪い情報がいかに素早く部下から上がってくるかが課長の死活問題

→部下の失敗をそのまま部長・経営者に伝えてはならない

→失敗の原因は、ウソにならない程度で脚色し、犯人探しが部下に向かないように

→部下が、「何かあれば課長に守ってもらえる」という実感をもって業務に専念



2.部下をほめ方向性を明確に伝える

ほめる=感謝を伝え、方向性をはっきりつたえる

ほめるの反対は無関心(沈黙)

部下の成果を、部下の能力・実績に照らし合わせて評価(自分と比べない)

褒める時は人前で、一人をしっかり褒める

優秀であまり褒めない部下には、第三者から褒めてもらうこともあり

言葉や金銭だけでなく、感謝状・顧客に褒めてもらう・記念品に刻印など「自分ならこんなふうに褒められたい」ということを想像して効果的に感謝の気持ちを表現する



3.部下をしかり変化を促す

しかることで、部下の自らの変化をうながす

人陰でこっそりしかる

若くて未熟な人格は、「しかる」を人格攻撃とみなす傾向がある

    自らの失敗談などでピリピリしないように

部下の叱り方 4つのフェーズ


    1.事実関係の確認

    2.原因を究明させる

    3.部下が気付かなければ、直接原因を伝え、部下をしかる

    4.感情のフォローアップをする



4.現場を観察し次を予測する

動き回る管理職(MBWA=Management By Wandering Around)

監視ではなく、注目する

    教育後は部下を信頼し任せる

直接、部下や顧客とふれあい「熱」を感じ取る

次の一手は事が発生してからでなく、事前に打つもの



5.ストレスを適度な状態に管理

ストレスが低すぎる

    <ストレスが大きくなるほどパフォーマンス上がる

        <ストレスが大きくなるほどパフォーマンス下がる・・・イノベーション起こりやすい

            <過度なストレス

ゾーン2、3にコントロールする



6.部下をコーチングし答えを引き出す

コーチングの基本=「問題の答えはその人の中にこそ存在する」

質問をベースにしたコミュニケーション技術

コーチングの目的

    1.潜在能力を引き出す

    2.思考プロセスを鍛える

    3.モチベーションを高める

コーチングの心構え

    1.人の価値を認め、可能性を信じる

    2.秘密は堅く守り、信頼関係を築く

    3.コーチングは万能ではない

コーチングの禁止事項

    1.アドバイス・支持・提案は決して行わない

    2.YES/NOクエスチョンは行わない

    3.なぜ?に避難の意味を込めない



7.楽しく没頭できるよう仕事をアレンジ

仕事に没頭する状態の条件

    1.やることの目的と価値が明確

    2.活動を自分でコントロールできる

    3.難易度がちょうどいい

    4.邪魔が入らない

    5.活動最中に、成功失敗が明確になる(ゲーム性)



8.オフサイトミーティングでチームの結束

居酒屋ではないところで、肩書きを超え本音を話す機会

継続させる工夫が必要

同僚が魅力的な人間、ということを思い出させてくれる



第3章 課長が巻き込まれる3つの非合理なゲーム

ゲーム1.企業の成長を阻害する予算管理

ステップ1:経営目標の設定

ステップ2:予算編成

ステップ3:予実管理

予算管理のルール

1:数値目標は、ウソにならないレベルで悲観的な視点から立てる。

    必要経費などの出費は多めに見積もり、顧客からの入金などは少なめに

2:数値目標に説得力のあるストーリーを準備する

    悲観的数値目標は客観的データを集めて説明

3:きまった数値目標は100%達成する。多すぎも少なすぎも良くない



ゲーム2.部下のモチベーションを下げかねない人事評価

人事評価は一方的なコミュニケーション

人事評価のルール

1:部下のモチベーションを上げる機会として利用する

    できればすべての部下に高評価を

2:低い評価には部下に心の準備をさせるようにサインを送る

3:低い評価の理由をくどくど述べない・今後に期待してると伝える

    原理原則ばかりの上司には部下は従わない



ゲーム3.限られたポストと予算をめぐる社内政治

ゲーム1、2はゲーム3より下位のゲーム

社内政治のルール

1:社内のキーマンを知り、その権力範囲を知る

    社長の息子・秘書・情報通・ベテランの女性など・・・

2:自らがキーマンにとって有用な人材になる

    ギブ&ギブぐらいでちょうどいい

3:いたるところで政敵を褒める

自らがキーマンになるには、公式・非公式社内横断的プロジェクトに献身的につながっていく





第4章 避けることのできない9つの問題

問題1.問題社員が現れる

問題社員への対応は能力アピールのチャンスでもある

法的問題は早急に法務部・人事部、上司に相談

Cクラス社員には、できる仕事を見つけて与える

Aクラス社員は、ある程度まで自由にやらせた方がいい



問題2.部下が辞めると言い出す

説得の前に辞める理由・決意の度合いを理解する

部下を観察し、ネットワークを駆使して部下の本音を理解するのは課長の大事な仕事

キャリアアップを理由に辞める時は、ぎくしゃくを避けたいだけかも。

部下の本音を理解するよう努め、公平に扱い、十分なチャンスを与えていれば、そうそう辞めたりしない

優秀な部下は、「やった方がいい仕事」は後回し、「やらなければならない仕事」を嗅ぎわける



問題3. 心の病にかかる部下が現れる

心の病は誰にでも起こる

職場の女性に「最近元気がなくなったな」と思う人がいたらすぐ教えてもらうよう、お願いしておく

時間を設けてメンタルヘルスの基礎を学ぶ



問題4.戒告人の上司や部下

格下と思ってた国から、日本が下流へ流される時代はもうすぐそこ

価値観は変えられないが、態度は変えられる

    文化の違いと思われる問題の多くは、実は態度の問題

同じ目標を達成したいという前向きな気持ちを常に確認しあう



問題5.ヘッドハンターから声がかかる

課長クラスの人材はこれから極端に足りなくなってくる

ヘッドハンターは使うのでなく、長く付き合うという姿勢が大事

急いで決めた転職は失敗する確率大

自分が唯一の候補者なのか、複数のうちの一人なのか

前の職場では〜、という話は厳禁、新しいルーティン・ワークを早く覚える



問題6.海外駐在を求められる

帰国後のポストの保障はない

帰国のタイミングを常に気にする

転職を視野に入れておけば、強気のネゴができる

海外駐在をステップアップにできるかどうかは、駐在期間中にどう過ごしたかによる



問題7.違法スレスレの行為を求められる

自らの常識を信じる

収益の量ばかりでなく、質を常に問う

ただし海外では常識は通用しない(労働時間などはトラブルの元)



問題8.昇進させる部下を選ぶ

イエスマンでなく、多少とげがあっても『本物』を選ぶ

人格が未熟で昇進できるのは係長まで、優秀な部下に協調性の大事さを教える

他の部下の嫉妬を防ぐには、昇進と同時に他部署へ異動させるのも手→ネットワーク構築としても有効



問題9.ベテラン係長が言うことをきかなくなる

係長からいきなり攻撃を受けても驚くな

ベテラン係長に、将来性のある優秀な係長と競わせるのも手

手間のかかる新人教育を任せるのも手

それでもだめなら、十分証拠を集めて人事部に相談

自分を権威づける方法

1.社内ネットワークの広さをアピール

2.自己イメージ管理に気をつける

3.社会的な証明を得る



第5章 課長のキャリア戦略

戦略1.自分の弱点を知る

自分の負けパターンを知っておく

怒りは負けパターン→常に事実をクールに述べる、メールは特に要注意

自己理解の過大評価も負けパターン→時間稼ぎをしてでも、その問題の適任者を探す



戦略2.英語を身につける

英語圏のネットは日本語圏の10倍

最も使われるのはブロークン・イングリッシュ

毎日一定の時間を取って、地道なトレーニン



戦略3.緩い人的ネットワークを幅広く形成

新しい職に必要なコネは80%が緩いコネ

強すぎる絆は関係維持に心理が流れやすい

強い絆ばかり優先させてはならない、弱い絆も大切にケアしていくべき



戦略4.部長を目指す

部長は転職で給与が下がるので、定年以外ではやめない

部長がそれ以上出世するのは運

部長になる方法

1:自分の課を成長させて部に昇格させる

2:部長の定年後のポジション

3:花形部署へ社内転職

4:転職(メリットは薄いかも)



戦略5.課長止まりのキャリアを覚悟する

無私になり、信頼を集められれば、世界どこでも通用する

課長は部長以上より、リスクが少ない

課長の失職はスキル不足でない

    →2年ぐらいの生活資金をためておけば、不況回復で新しい職が見つかる



戦略6.社内改革のリーダーになる

無駄だと分かっていても、自社を変える努力、社内改革のリーダーになるべき

    時代の進む方向に敏感になれる

そうしたチームに嬉々として集まってくるのは、例外なくトゲトゲした優秀な人材

(子供は敏感なので、子供の意見は大事に)

周りは変化し続けるので、自分だけ変化しないのは危険



戦略7.起業を考えてみる

課長は企業家の素質は十分

事業に成功して株式上場できるのは、1000社中2、3社

大体は資金不足が理由で没になる



戦略8.ビジネス書を読んで学ぶ

良書を選択的に読む

良書:その道のプロに読まれ、何度も増刷されているもの

良書は速読には不向き

良書は立ち読みで探せ

実行プロセスと結びつかなければ意味がない

良いページは思い切って三角に折っておく(私は図書館で借りてるから無理)