マルクスる?世界一簡単なマルクス経済学の本
- 作者: 木暮太一
- 出版社/メーカー: マトマ商事
- 発売日: 2006/01/06
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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[内容]
マルクス経済学を簡単な言葉で、説明。資本主義がどのように発生して、どのように展開し、どのように終息するか。
[感想]
非常に基本的な貨幣の意味、労働の意味などから始まり、最終的には銀行の意味などまで理論的な背景がわかった。貨幣や銀行など、あまりその意味を考えたことはなかったけど、こうして理論的な役割を見てみると、すごく特別な存在だということが分かる。貨幣、手形などは信用というもので成り立っているというのは、現在の金融危機を理解するのに大いに役立った。また、資本主義社会において、恐慌は不可避であるというのは驚きだな。けど、恐慌は資本主義社会の敗北ではないということがわかったので、なんか安心した。
[概要]
使用価値:それを使って意味がある、何かの役に立つ、ということ
価値:それを作るのにどれだけ手間がかかったか
具体的有用労働:具体的な仕事、使用価値を作る
抽象的人間労働:単にエネルギーを使うという意味での仕事、価値を作る
生活手段:生活するのに必要なもの
生産手段:生産するのに必要なもの
消費手段:消費するもの
資本:ビジネスの元手、貨幣資本(現金)、生産資本(船とか)、商品資本(そのまま売れるもの)
1章 商品と価値形態
価値決定
社会的平均時間で決まる
商品
他の人にとって使用価値があると同時に、価値を持たなければならない
価格法則
1.商品は、需給が一致していれば、価値どおりに価格が決まり、価値どおり交換される
2.商品の価値の大きさは、それの生産に必要な社会的平均時間に基づいた抽象的人間労働の量で決まる
交換より利益が生まれるわけではない。
交換経済の成立
Xkgの小麦=Ymの絹布だとしても、Ymの絹布=Xkgの小麦とは限らない。
商品同士が交換されるためには、多数の商品の価値をある特定の商品の価値で表さなければならない。
⇒一般的等価物
一般的等価物を通して、初めて商品同士の交換が可能
⇒貨幣の登場
貨幣形態
金が一般等価物になった(ただ適していたから)
金も商品である(価値と使用価値を持つ)ので、価値も変わり得る
貨幣となった金には、金そのものの使用価値と、貨幣としての使用価値がある。
貨幣の必然性
物々交換社会の商品流通性を上げるため、貨幣は必要
貨幣の物神的性格
金は便利だから一般的等価物としての役割を持っているだけなのに、金が貨幣として使用可能なのは、金がすごいからと勘違いしてしまう。
貨幣の機能
1.価値尺度
2.商品流通の手助けをする。
3.貨幣としての貨幣
貯めたり、場所を移したりすることを目的とする貨幣
貨幣の必要量
商品総額=貨幣量×貨幣の流通回数
流通回数はそんなに変わらないので、貨幣量が増えると、商品総額も増えなくてはならない。
でも、生産量はそんなに簡単に増やせないので、単に単価が上がる。
⇒インフレ
2章 剰余価値の生産
『需要と供給が釣り合っていれば、商品は価値どおり交換される』ので、売買によっては利益は出ない。
ではどこから?
⇒資本家は労働力を買って(労働者を雇って)、労働力を消費する(労働させる)ことで剰余価値を生み出せる。
労働者になるための条件
1.自由意志で、自分の労働力を売ることができる
2.自分では生産手段を持たず、収入を得るためには自分の労働力を売るしかない
労働の二重性
労働とは、
1.他の商品に対して新たな価値を付け加えるという使用価値を持つ
2.抽象的人間労働の投入により他の商品の価値を形成する
という二重性を持つ
労働力という商品の価値
他の商品と同じように、その商品を生産するのに必要なもの(費用)の合計で決まる
「働ける状態の維持」に必要な「生活手段の価値の合計」で決まる。
人によって給料が違うのは、需給関係による。
必要労働と剰余労働
必要労働:自分の労働力の価値と同じだけの価値、を生産する労働
剰余労働:資本家のために剰余価値を生産する労働
不変資本と可変資本
不変資本(c):生産過程で価値の大きさが変わらない普通の原料、機械など
可変資本(v):労働力(消費によって価値の大きさが変化する)のこと
剰余価値の種類
絶対的剰余価値:剰余労働の長さ、強度を大きくして得られる剰余価値
相対的剰余価値:ある分野の生産性向上で商品価値が低下し、労働者の価値(生活品)が下がることで、必要労働時間が短くなって、相対的に剰余労働時間が増えることで得られる剰余価値
特別剰余価値:独自技術などにより、個別的価値(自分にとっての価値)が社会的価値より小さくなって得られる剰余価値。技術が広がり、次第に小さくなる傾向にある。結果として相対的剰余価値が生まれる。
機械制大工業への発展
1.協業
大きい方が有利
2.分業
⇒仕事が単純になり、労働者の熟練度が増す
⇒労働力の価値が下がり、相対的剰余価値が生まれる
⇒労働者がサボるのを防ぐ
⇒技術進歩、機械の発明が促される
労働者主体から機械制大工業へ発展する
機械制大工業の特徴
1.労働強度の低減、生活費の低減から労働力の価値が下がり、相対的剰余価値は向上
2.労働の単純化により、教育費の低減
3.労働の単純化により、労働の供給増加、労働力の値段が下がる
4.資本家が強く出れて、労働時間・強度の増大を強要できる⇒絶対的剰余価値の増加
5.新技術の発明が起こりやすく、ますます人は要らなくなる⇒ますます機械にお金かける⇒繰り返し・・・
3章 資本蓄積
単純再生産:利益を全て消費する
拡大再生産:利益の一部を生産活動に使う
資本蓄積と生産力向上の関係
生産性向上のため、あるところで資本の集中、蓄積(合併)
⇒それが引き金になり、新たな資本の集中、蓄積を起こす。
⇒より良い(高い)機械が出てくる。
⇒資本の「有機的構成」が「高度化」していく。(機械が増えていく)
資本の有機的構成:不変資本c(機械)と可変資本v(労働者)の割合
相対的過剰人口
新たに人を雇うということは
1.企業の規模が縮小している、もしくは変化していない場合、代わりに企業内でクビになる人がいる
2.企業の規模が拡大している場合、ライバルのシェアを奪っているので、ライバル企業内でクビになる人がいる
相対的過剰人口:失業している人々のこと、産業予備軍
史的唯物論
有史以来の人間社会の歴史を、生産諸力と生産諸関係の矛盾を基礎におく階級闘争の歴史と捕らえる
原始共同体⇒奴隷制⇒封建制⇒資本主義制(⇒社会主義製)と移り変わるが、これらの社会形態はどこかに無理が生じて、次の社会形態へ移る、という歴史観。
資本主義制では、労働者が耐え切れなくなって社会主義革命を起こす
4章 資本の流通
拡大再生産が行われるためには、余剰生産手段がないといけない。
拡大再生産における問題
機械更新時に
以前購入した機械によって生産される価値(f)>新しく買うために積み立てたお金(GF)
という『f>GF』問題が起こる。つまり、機械を買う分より、多く商品を売ることになる。
優先的拡大と不均等的拡大
生産手段を作る企業1と消費手段を作る企業2の比較
企業1の方が大きくなりやすい。
1.優先拡大
資本構成の高度化により、機械を作る企業1に注文が入るため
2.不均等的拡大
企業2からの機械の発注が増える
⇒企業1は、機械を作る機械を増やしていく
⇒企業1は、企業2の生産とは不均等的に生産を増やしていく
不況、恐慌との関連
企業1と企業2のどちらかが業績悪化して、相手から買う量を減らすと、両方とも業績が悪化していく。
企業1の方が悪化しやすい。
最終消費財は生産を減らせるが、中間消費財は需要の減退に気付きにくいため。
5章 利潤の法則
利潤:儲け、利益
費用価格:c+v
利潤率:m/(c+v)
資本家は剰余価値そのものよりも、利潤率が高いところに投資する。
利潤率の規定要因
1.資本の有機的構成
剰余価値率(m/v)一定とすると、有機的構成の高度化により、利潤率(m/(c+v))は減る。
しかし、総利益は向上する。
2.剰余価値率
剰余価値率は最初は向上するので、利潤率も最初は上がる。
3.資本回転数
資本回転数:一定期間内に何回生産活動を行えるか
利潤率の平均利潤率への転化
個々の利潤率はだんだん平均利潤率に近づく。
市場価値:最頻値の商品の価値
社会的価値:商品の加重平均
部門別平均利潤率:ある産業部門内すべての企業の生産性、利潤率は同一になってくる。
部門間平均利潤率:投資家の投資先最適化により、産業間で資本の移動が起こり、利潤率は同一になる。
一般的利潤率:このある一定の利潤率
一般的利潤率の低下法則
企業は自分の生産する商品の個別的価値を社会的価値より小さくして特別剰余価値を得ようとする。
合併、資本の集中
→資本の有機的構成が高度化
→労働者より機会の量が増える
→vの割合が減ると、mの生産高も限られてくる
→利潤率が減ってくる
利潤率低下に対する要因
現実には利潤率はそれほど低下していない:利潤率低下に対する要因
p = m / (c+v)
1.分母を減らす要因
・不変資本の低廉化:原料の低価格化(c低下)
・貿易:原料の低価格化(c低下)、労働者生活費の低下(v低下)
・相対的過剰人口:労働供給量増加(v低下)
2.分子を増やす要因
・絶対剰余価値の拡大
・相対的剰余価値の強制的拡大:給料を適切に支払わないということ
しかし、これらの要因はそもそも『利潤率を低下させる要因』から生じているので、長期的にはこれらの要因は効かない。
資本主義社会の矛盾
利潤率の低下は、別々に生産していた時の利潤の合計より、合併後の利潤の方が少ないということ。
→合併統合で、国民の消費能力は絶えず低下するにも関わらず、商品はどんどん増える。
→最終的に、資本の量を増やしても利潤の絶対量が増えなくなる(資本の過剰生産)
→ある時破たんし、恐慌になる。
→強制的に生産量が修正される。
恐慌の必然性とその役割
需要と供給のギャップから必然的に恐慌
→企業は選別され、淘汰される
6章 資本循環
元手は、貨幣資本→生産資本→商品資本→最後に現金化
この流れを産業資本という。
この流れには流通費と流通期間が必要になる。
流通費
1.人件費・簿記費
生産活動にとってマイナスの費用
2.保管費、運転費
商品の質を下げない、という意味で無駄な費用ではない
流通期間
流通期間の短縮により、資本金が節約され、利益は拡大する。
7章 商業資本
商業資本の役割
1.流通費と流通時間を節約
産業資本の流通費・流通時間を肩代わり
流通を社会的に集中して行うので費用と時間が節約される。
2.産業資本の予備資本が少なくて済む
産業資本は資本金を節約でき、その分生産活動に充てられる。
商業利益
商品取引資本は剰余価値を生み出せない。
産業資本から安く買い、普通の値段で売ることで利益を得る。
利潤率は一般的利潤率になる。
cf.)産業資本は利潤率向上は無限の可能性があるが、費用を減らす立場の商品取引資本には利潤率に限りがある。最終的には販売数を増やすしかない。無駄を省くことが商業利益となる。
8章 利子生み資本と信用
金融機関の発展
支払・受取業務の複雑化から、分業が起こる→貨幣取引資本
ここではまだ、貨幣流通のスムーズ化を図っているのみ
利子生み資本
貸出・運用されることで利子を生み出す資本
利子とは、資本が生産活動に用いられて得られた利益の一部
利子生み資本として働くのは、再生産過程の外に蓄積されたもの(余っているお金)である。
信用
信用の役割
1.貨幣を節約する
2.資本回転を早め、産業資本の生み出す剰余価値を大きくする。
信用形態:商業信用と銀行信用
商業信用
掛・ツケで売り買いすること
・社会的貨幣量を節約する
・流通時間を短縮する
・流通費用を節減する
・追加的資本を節約する
しかし、商業信用には限界がある。
この信用の限界を無制限にしたのが銀行信用
銀行信用
銀行信用は、手形をすぐに現金に換えてくれる。(手形割引)
手形割引は将来のお金を安く買っている。
手形割引を買うだけの貨幣を持っていない場合は?→そんなことは起こらない
銀行は期限付きの商業手形を支払期限のない手形(銀行券)によって割り引く、つまり自己あて債務という形で銀行券を発行し、商業手形を割り引く。
銀行券とは、そもそもは『金の預かり証』だった。つまり、銀行券の発行は、支払わなければならない金の量が増えたということ。誰もが、銀行はすぐに金と交換してくれると『信用』しているので、金の支払期限はない。銀行券の発行権は中央銀行(日本では日本銀行)のみに与えられる。
利子率という概念
利子率が高くなると、現在の価値は少なくなる。
銀行の貸出の仕組み(信用創造)
銀行が貸し出す際、実際に現金を手渡すわけではなく、預金口座に振り込む。
しかし、化した金額すべてを現金で用意しておかないといけないということではない。
例1.企業間の支払は、預金通帳を書き換えるだけでいい
例2.企業はすぐ使うとは限らない
銀行は経験上、貸した額に対してどれくらい実際に払い戻されるか知っている(預金準備率の決定)
よって、銀行は準備額を大きく超えて貸出できる。
擬制資本
本来剰余価値生まない、土地、証券など
これらは利子生み資本的側面を持つため、資本的に扱われる。
実際には価値を生まない。
株券などの擬制資本の三面性
1.資金の貸し手から見た利子生み資本的性質
2.擬制資本
3.資金の受けてから見た産業資本という側面