超格差社会アメリカの真実
- 作者: 小林由美
- 出版社/メーカー: 日経BP社
- 発売日: 2006/09/21
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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アメリカの格差社会の現状、歴史的背景、力学
[感想]
もちろん日本やヨーロッパでも格差はあるけど、なんでアメリカは特別に激しい格差社会になったのかと、前から疑問だったけど、少し解消。現在問題になっていることは、アメリカの歴史(移民社会である、という長い歴史、80年代以降の政治の歴史)に関係あるんですね。
日本がアメリカよりも救いがあるのは、教育が必要だと(ほとんど)全ての人が認識していることだろうか。
アメリカのように極端なのは、やはりやだなぁ・・・豊かになっても同じ国内の貧困から目を背けないといけないなんて。ん?日本にいても俺は貧困から目をそらして生きてる?
本としての構成は、歴史やら政治やら話がごった煮すぎて、論理的な構成ではない。開拓時代からの歴史については格差にあんまり関係ない話が多い気がしたので、読み飛ばした。
[概要]
アメリカの社会=特権階級+プロフェッショナル階級+貧困層+落ちこぼれ
特権階級+プロフェッショナル階級 = 5%(60%の富)
これに不平を唱えないのはなぜか?―オプティミズム
金持ちは能力+努力があるからであり、貧乏なのは無能か怠け者だからである、と思っている。
上から下まで、全員が新しいアイデアを考えており、資金もあるので、新しいビジネスが生まれやすい。
プロフェッショナル階級
海外からの頭脳の流入により、取って代わられる。
貧困層
元中産階級が消える理由
諸外国の技術向上+経済グローバリゼーションにより仕事が海外げ流出し、賃金低下、ハッピーリタイアメントは消えた。
これより下層は借金漬け(アメリカの消費を支える)
落ちこぼれ
低所得層に生まれると高額な学費を払えず低所得層の連鎖となる。
富裕層がさらに富を集める
ウォール街は人口のトップ1%を幸せにすれば全米金融資産の6割を抑えられる。(10%で9割)
そして、この層がアメリカ大統領選を支えている。
↓
富裕層を優遇する税制(共和党の減税策)
↓
80年代以降所得格差が大きく進んだ
80年代以降の政府
1.レーガン政権―共和党
スタグフレーションに対し小さな政府(大減税と財政支出の削減、規制緩和)
「イラン捕虜問題」に由来する軍拡
⇒今日につながるアメリカ外交基本戦略(世界平和を守るぞ!)
所得税↓(富裕層に有利)+社会保障税とガソリン税↑(貧乏人の負担) − アラン・グリーンスパンの減税策
2.クリントン政権―民主党
低金利によって、株価と不動産価格の上昇
↓
キャピタルゲイン(課税率低い)の上昇、しかしインフレ率は低いように見える
資産のない低所得者には悪循環、ウォール街には好循環
好景気の火付け役=情報革命
・ ウォール街はこれを早くから利用し成長し、発言力を強めた
・ 資産の証券化+インダストリアルアメリカの金融証券化
小口化により市場流動性が増し、市場が広がった(国債、貯金より高ければいいから、収益性は低くてもいい)
結果として、資産、事業の持ち主がウォール街となった
↓
金融商品価値をあげることが目的となった
↓
製造業縮小化
↓
未熟練労働者の上昇機会が減少
・ ネットへの投資増大、新たな富裕層
・ 通信自由化と独占禁止法の緩和による、メディアの集中
3.ブッシュジュニア政権―共和党
イラク侵攻!の動機
i. 石油の確保と石油企業の利益
エネルギー企業が株価上昇(ブッシュのお膝元の企業)
ii. 軍需関連企業の利益
軍の発注は、不正があっても、サプライが最優先でうやむやになってしまう。
iii. ドルの対ユーロ防衛
フセインが石油をユーロ建てにした
ドル建てからユーロ建てになるとドル大暴落・・・
フセインを取り除かねば!
アメリカの教育問題
開拓時代からのエヴァジェリカルの教え(感情に訴える)
英雄に高等教育は不要、素朴で強く、勤勉な人殺しが不可欠。
この背景により、学校は実利主義に、低所得者も教育を受けられるように、教師の報酬は低くなった。
内容も娯楽的になり、基礎科目は減らされた。
移民国家のために、移民を同化させる教育で終わってしまう。
教育を通して階級が一層固定される
私立一流セカンダリスクール(小中学校)は2〜3万ドル/年
しかもインフレ率より断然早くあがり続ける学費
よって、子供を持つプロフェッショナル層は、高度教育を受けさせるため、高級住宅街へ引っ越して質の高い公立校へ。
南部、中央部ではいまだに反インテリ、教育を軽視する風潮のために貧困層が多い・・・