仕事に役立つインテリジェンス

仕事に役立つインテリジェンス (PHP新書)

仕事に役立つインテリジェンス (PHP新書)

[内容]
得するための知識であるインテリジェンスをインフォメーションから生み出す作業、すなわち分析において、陥りやすい落とし穴とその回避策について。

[感想]
仕事に役立つ、というより、もっと大きなレベルの、政策決定などを対象として書かれているように感じた。この本における内容は、概要中の、5つのヒューリスティクスだけしかない、と言っても過言ではないだろう。しかし、それぞれに付随するたとえ話や実験例などが面白い。
これらの知識が、自分が実験結果を分析する際などに、ものすごく役に立つ!ということはないと思うが、注意しといた方がいいな、と思うヒューリスティクスはいくつかあった(アンカリングのヒューリスティクス)。
ところで、昨今問題になっている環境問題がとんでもないプロパガンダかもしれない、といった考えは、因果関係のヒューリスティクスなどと関係があるな。温暖化防止から短絡的にレジ袋減少につながるのは、利用可能のヒューリスティクスだったりするかも。この本とは関係なくなっちゃうけど、環境問題対策に必要なのは、頭の良さと優しさだと思う。どっちかだけでもダメ。
私はこれらのヒューリスティクスをなんとなく意識していることが多いが、一般的に多いと思われる確率的な誤解(典型のヒューリスティクス)などは明文化されている。でもやっぱり、自分にはあんまり真新しいことなかったな・・・


[概要]

自分の直感の問題点を意識しながら、適切なメソッドで分析すれば、過去の真相解明、未来予測の精度は確実に上がる。

分析=サイエンス+アート
サイエンスのみ→ルービンの花瓶幻覚
アートのみ→様々なヒューリスティクスの罠
大事なのはサイエンスを踏まえて、ヒューリスティクスの悪影響を最低限に抑え、最終的にアートによる決定をすること。

ヒューリスティクスアルゴリズムを省略し、生活を円滑にする働きであると共に、あらゆるバイアスの現況でもある。新人よりもベテランがこの罠にかかる。無意識のうちに発生するヒューリスティクスこそ、分析の際の落とし穴。

1.典型のヒューリスティクス
一方が他方の典型であったり、似ていたりすると、療法を無意識のうちに短絡的に結びつけてしまう。
    ベースレートの誤信・・・判断基準とすべきベースレートを無視・軽視してしまい、適度の仮説修正が妨げられる。
    ギャンブラーの誤信・・・「もう一方がそろそろ起こらないとおかしい」と考えてしまう。

2.利用可能性のヒューリスティクス
無意識に思い出しやすいもの、利用しやすいものを重視してしまう。
    「こういう人がいる』症候群・・・個人的に得たインフォメーションの方を採用する。
    どこまで全体を代表しているかわからない数名の人間が対面方式で与えたインフォーメーションの方を信じる。
    無意識のうちにクローズアップされたインフォメーションを過大評価(航空事故や自然災害、テロなど)
    特に多忙の時に生じやすい
    →大量のインフォをこつこつ読み解くことをおろそかにしてはならない。

3.因果関係のヒューリスティクス
物事には必ず因果関係があると思い込んでしまう。
    理路整然としていない大概の複雑なプロジェクトを、理路整然とした筋道をつけて説明してしまう。
    そもそも因果関係がないものもある。
    因果関係から理路整然と導かれる仮説をひいき目に見てしまい、そこに当てはまるインフォばかりに気を取られ、誤りを犯す。
    ハリネズミ(自分の専門分野で知識を積み上げた人)より、狐(自分の理論に自信がなく懐疑的な人)の方が変化する現実に柔軟に対応できる。
    →ベテランは注意が必要


4.修正/アンカリングのヒューリスティクス
無意識のうちに結論を出してしまい、そのうちにそれを徐々に修正する。
とりあえずの結論がアンカーのようになってしまい、あとで色んなインフォメーションを与えられても十分に修正できない。
    きわめて深刻なヒューリスティクスである。
        ・その存在を強く認識しても、修正を十分に行えない
        ・これが引き起こす問題は、豊富な知識や経験に基づき、素早くとりあえずの仮説を立てるという形でベテランに起こりやすい。
    解決策=競合仮説分析(ACH


5.跡知恵のヒューリスティクス
過去に起こった出来事を振り返るときに、あれは自分が予測していたと思い込んでしまう。
    存在を強く意識しても、根強く、仮説の修正度合を誤らせる。
    解決策=ベイズの定理
    http://forensic.iwate-med.ac.jp/aoki/vf/risshi.html
        ベイズの定理により、新たな変化を、これまでの積み重ねによって相対化できる。

競合仮説分析(ACH)のやり方
    1.仮説を出し切る
    2.インフォメーションを縦軸に、仮説を横軸にしたマトリックスを作成
    3.アレクサンダーの質問・・・どのようなインフォがあれば仮説が否定できるかを考える
    4.インフォと仮説の突き合わせ(C・・・適合、?・・・判断できない、I・・・整合しない←これが一番重要)
    5.新たな仮説がないか検討、すべての仮説でCなものは消す
    6.Iが極めて多い仮説は消す
    7.アート(直観)で判断
最終的にはアートだが、サイエンスを基礎に据えることで、判断の誤りを減らすことができる。
    8.メソッドの結論と、直観が食い違っていないか判断、食い違っていれば理由を検討すべき。

リンチピン分析
リンチピン・・・これが変わると分析全体が変わってしまうという、分析の基礎をなす前提。
それが当然、と言えないならそれは前提とは言えない。
    前提と思っていたものが、単なる仮説の集合であるかもしれない。
「仲間うちだけの予測」に注意(あまりに広範に共有されている問題は改めて検討されにくい)


グループ分析
同じ様なバイアスをもった分析官で分析をすると、バイアスはむしろ強化されてしまう
    →似た者同士で分析するのは危険、専門・背景の異なる人を入れる